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機体も独自に設計・開発し、一九九三年三月、ジュラルミンではなくて複合材(炭素繊維強化エポキシ樹脂)で作った六人乗り双発ジェット機の初飛行に成功した。
そこで、NASAなどが革新的飛行機の研究として、実験的に手がけていた前進翼と呼ばれるジェット機を開発した。
通常の航空機のように翼が後ろに傾いている後退翼とは反対である。
前進翼機が量産化された例はないだけに、いかにもホンダらしい、チャレンジングな試作機だった。
ただし、エンジンは米国製で、胴体の上部に背負った形の双発機であり、複合材をふんだんに使っているだけに軽量で旋回性能に優れているが、一般にこの前進翼機は操縦安定性が問題とされていた。
なにかと警戒感をもって見られがちなホンダのアメリカにおける航空機への取り組みだけに、このとき、新たな摩擦を避ける意味からも、実機の写真や基礎データは公表しなかった。
その後エンジンは、一九九五年から九六年にかけて、延べ七十時間の航空飛行試験を終え、現在はさらに出力をアップして燃費をよくしたタイプを使って、さらに開発を進めているという。
二〇〇一年には、ホンダR&Dアメリカは引き続き小型ビジネスジェット機の開発・研究のために、ノースカロライナ州のピードモント・トライアド国際空港にアトランティック・エアロ社が所有するファシリティーの一部を賃借して、ハンガーと事務所スペースを設置するこことした。
ホンダで注目すべきは小型ジェット機だけでなく、一九八六年から、金も高度な技術も必要とする小型ジェットエンジンの開発を手がけて実現したことである。
このエンジンを他社の機体に搭載して実験を繰り返してきたが、二〇〇三年内には、新たに自社開発した六、七人乗りの機体に搭載してアメリカで飛行試験を行う予定である。
今回は初めてエンジン、機体とも自社開発で臨むことになる。
その点では、着実にステップを重ねてきており、「優れた技術が確立できれば事業化も検討したい」と含みをもたせている。
経済産業省の小型ジェット旅客機計画のスタートと、奇しくも一致している。
かつて、市販の自動車とはかけ離れたFーレースにホンダが出場する理由として、「走る実験室」といった表現をした。
確かにそこで得た技術が量産車に活かされることもあったが、それはほんの一部でしかなく、広報部門が勝手につけた単なる宣伝文句だった。
むしろ、自動車レースで世界の頂点に位置するF1に果敢に挑むこと、その姿勢が社内を活性化させ、外部への宣伝効果もあり、技術者が鍛えられて養成される場ともなっていた。
先の歓談の中で吉野社長は航空機を手がけることが自動車の開発にも活きてくると述べていたが、それは巷のジャーナリズムが、まことしやかに語る複合材が活用できるといった具体的なハードウエアの技術ではない。
「航空機の技術は各種の耐久試験や認定試験をへて信頼性を確認し、品質を保証していくが、その手法や手順において自動車も大いに学ぶべきところがある」だが、それと同時に言明していた。
「ホンダは必ず飛行機を売り出すつもりだ。
既存の航空機メーカーとは違う、自動車の生産で培った安く作る技術を活かしたスポーツ性のあるものになるだろう。
期待してほしい」また吉野社長は二〇〇三年六月二十日付の朝日新聞のインタビューで答えている。
「組織が巨大になり、個々の技術者がいきいきとしてもらうには、かなりのことをしないと無理だ。
基本は仕事のテーマ。
やる人にとって面白ければ、途中に障害があっても続けていく。
世界初だとか世界一だとか、社会正義みたいなのが動機付けになる。
研究と開発を分け、研究は失敗してもいいぐらいのつもりでする」ニ〇〇三年六月に吉野からバトンタッチした新社長の福井威夫もまた「ホンダらしさを追求し続けていくためにも、次の目玉として小型飛行機を売り出していきたい」と意気込みのほどを語っている。
そんなホンダの航空機分野への進出第一段が、航空機用ピストンエンジンであった。
二〇〇三年三月、ホンダはアメリカの小型航空機用エンジンの大手メーカーであるテレダイン・コンチネンタル・モーターズ(TCM)との提携を発表した。
自家用や小規模事業用の小型機では世界の七〇パーセント近くを占めるアメリカ市場を最大のターゲットとして、独自に開発した二、三人乗りのプロペラ式軽飛行機用エンジンの事業化に向けたマーケットリサーチを両社共同で行う。
この調査には数ヵ月かかると見られている。
このピストンエンジンは水冷式水平対向囲気筒で、三年前に開発に着手した。
開発を手がけたのはホンダの子会社である本田技術研究所で、二輪車で培った技術をべースにしているが、詳細なデータは公表していない。
いずれにしろ、二輪あるいは四輪でも強く要求される「低公害で低燃費、軽量小型の高出力」エンジンである。
航空機独特の実証試験などは手馴れているTCM社の支援を得て進めてきた。
ちなみにTCMの親会社であるテレダイン・テクノロジー社は電子機器装置や通信機器、航空システム、防衛関連機器などを幅広く手がける企業集団である。
これまで航空機技術に関して語られてきた定説がある。
高度な最先端技術としての軍事技術、あるいは航空機技術をトランスファーして一般民生品に活かす。
確かにICや複合材、光技術、燃料電池、インターネットなどの技術は軍事技術が出発点で、それが民生品に活かされ、より拡大発展して今日の姿がある。
航空機(軍事)技術が上位にあって民生技術が下位にあるという、技術の波及効果の流れである。
だが今日は、航空機では世界の最先端を行くアメリカで顕著だが、むしろ逆の流れであって、高額化して軍事予算が硬直化し、現実性をもたなくなってきた特殊な航空機(軍用機)分野に、いかにして一般性があって、品質も量産性も高くて安価な民生技術を浸透させていくかにある。
いわゆる、軍民両用のデュアルユースの考え方である。
その意味では、コスト競争が織烈で、極限までのコストダウンと量産性を追求しながらも、高い品質と信頼性が求められる自動車の技術を、いかにして高価な航空機の世界に適用し、安く作れるようにするか。
それが、コスト競争の激しい現在の小型航空機や軽飛行機の最大のポイントといっても過言ではなそうした観点からも、ホンダやトヨタがもし参加するならば、これまでのやり方では、小型民間機の世界市場に進出することができなかった日本の限界を突破するヒントになり、糸口となる可能性があるかもしれない。
かつては、航空機用エンジンと比べ、自動車用エンジンは遅れているといわれていた。
だが、最近では自動車に対する要求も厳しくなり、軽量化や高出力化、燃料の電子制御などエレクトロニクス技術、センサー技術、直接燃料噴射技術、公害対策としての触媒技術なども多用されて、むしろ、特殊な要素は別として自動車エンジンのほうが技術的に高度になっている面もある。
ピストンエンジンとはいえ、ホンダが売り出すであろう航空エンジンがどの程度市場に食い込めて、さらには航空機事業が今後どう展開していくかは、閉塞状況にある日本の航空機産業の一つの可能性の追求といった関心からも注目に値しよう。
国内の航空機メーカー各社からは、「ホンダのお手並み拝見」とか「自動車と航空機とは違うし、そう簡単なものではないし、甘いものでもない」といった反応が多い。
確かに、吉野社長も指摘していたが、FAA(米連邦航空局)の認証を受ける手続きなどは複雑で、自動車とは大きく異なる。
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